2017.11.18 Saturday
2017.11.17 Friday
048 退会届
東京アートディレクターズクラブ 会員のみなさまへ
東京五輪エンブレム問題に関して、東京アートディレクターズクラブ(東京ADC)はいっさい発言せず、クラブとして沈黙を貫きました。東京ADCが沈黙し、無策であったということは、会員である佐野研二郎さんや博報堂出身者に集中したバッシングや加熱報道の状況をクラブとして黙認したことになります。
東京ADCが「クラブ」という組織体勢を理由に無策であったことを正当化しようとしても、東京五輪エンブレム問題の当事者や関係者(審査委員、入賞者、招待作家、出品者、組織委員会の仕事を請け負う広告代理店関係者)の大多数が東京ADCに属する会員であったという厳然たる事実の前では、無策が社会的責任の放棄であることは否めません。
東京五輪エンブレム問題は佐野さんひとりの問題ではないにもかかわらず、その人のイメージだけが鮮烈に記憶されましたが、あのとき東京ADCが組織力をもって何らかのアクションを起こしたならば、批判や関心がひとりに集中せず、少しは状況が変わっていたかもしれません。もう少し人権が守れたのではないかと思えてなりません。
専門家が沈黙したことで、専門家以外の人たちは戸惑い、デザイナーを志す学生たちは、何を信じれば良いのか路頭に迷ったのではないのでしょうか。とりわけ学生たちの困惑はいかばかりであったか、そのことを案じながらブログの執筆を続けてきました。当時の異常な状況で他者を巻き込まないために独りで発言してきましたが、個人としての発言行動には限界があったと今は感じています。
東京ADCは1952年の発足以来、公募という方法論を用いて作品を募り、会員たちの見識と評価軸によって同業者の仕事に優劣をつけ、広告業界やグラフィックデザイン業界の中でリーダーとしての影響力を発揮してきました。しかし今となっては、真のリーダーではなかったということを多くの人が感じているのではないでしょうか。
「何を今さら」という沈黙者たちの自己防衛や自己保身のための「言葉の暴力」に屈することなく、おかしいことをおかしいと言えない空気を打破するために、偽りではない真の信頼関係を築くために、自らの立脚点を明確にすべく、東京ADCを退会いたします。
平野敬子
2017年11月16日
1年に1度開かれる東京ADC委員会に上記退会届を提出し、受理され、11月16日(木)をもって東京アートディレクターズクラブを退会いたしました。
平野敬子
白紙撤回となった2020東京五輪エンブレムの審査委員を務める
お知らせ:2016年11月1日発売の『建築ジャーナル』(11月号)の特集「五輪を嗤う」に寄稿しました。
http://www.kj-web.or.jp/
事実と考察 001 責任がとれる方法で 002 公募期間の短さ 003 『展開』『展開性』『展開力』 004 知らされなかった招待作家 005 ブログを読んで下さっているみなさまへ 006 利害優先の土壌 007 修正案承諾拒否の経緯と理由 - vol.1 008 修正案承諾拒否の経緯と理由 - vol.2 009 『公』の仕事 010 専門家の盾 011 秘密保持誓約書という密室 012 いまこそ、私心なき専門性を問う 013 判断の論拠 014 最終の審議 015 金銭感覚と敬意の相対性 016 表現におけるモラリティと表現者のモラル 017 言葉のちから 018 何のための調査なのか、調査の目的は何なのか - vol.1 019 何のための調査なのか、調査の目的は何なのか - vol.2 020 何のための調査なのか、調査の目的は何なのか - vol.3 021 何のための調査なのか、調査の目的は何なのか - vol.4 022 願い 023 摩訶不思議な調査報告書 024 負の遺産とならないように 025 出口なき迷路 026 届かぬ思い 027「社会に位置づくデザイン」という観点 028 無責任主義の村 029 審査委員として知り得た情報のすべて 030 新聞寄稿文への異論 - vol.1 031 新聞寄稿文への異論 - vol.2 032 1対3の構図 - 「A案」VS「BCD案」 033 今を生きる 034 負の連鎖……を断つために 035 欲望の公害 精神の断絶 036 イカサマ文書 by JAGDA - vol.1 037 イカサマ文書 by JAGDA - vol.2 038 イカサマ文書 by JAGDA - vol.3 039 事実はひとつ 040 新世界へ 041 JAGDA文書への意見と要望 ― 法律の専門家による分析 042 JAGDAの回答 JAGDAへの要望書 043 「要望書へのJAGDAの回答」に対する更なる質問 044 「意見書へのJAGDAの回答」に対する質問と提案 045 ブラック・デザイン 046 弁護士から届いた封書 047 おとぎの国の物語 048 退会届