2015.10.13 Tuesday

002 公募期間の短さ

白紙撤回となった前回のエンブレム公募期間は、2014年9月12日〜 11月 11日の約2ヶ月間、エントリー(登録)後に応募要項が届くというシステムだったそうで、そのタイムラグを差し引くと実質の制作期間は最長で約1ヶ月半、さらに締め切りの数日前に応募要項に記載されていたパラリンピックのスペルミスが発覚するという前代未聞のミスもあり、人によっては制作期間が1ヶ月を切るという短さだったという事情を、エンブレム問題発覚後に出品者からお聞きしました。オリンピックのエンブレムクラスのデザイン開発期間が1ヶ月から2ヶ月というのは短すぎると考えますので、第一線で活躍されている出品者のみなさまが、多忙な日常業務のなかで時間捻出に苦労されたのではないかと想像いたします。

審査委員の依頼を受けたはじめての打ち合わせの際に、コンペの規定内容で気になる項目について質問しました。そのうちのひとつ、公募期間の短さについて質問したところ、依頼にみえた担当者から、「エンブレムの使用開始のタイムスケジュールと国際商標取得のための調査期間から逆算し、この期間になりました」との説明を受けました。本来ならば優先すべきデザイン開発の時間を下位に置いた結果、公募期間が圧縮されたと考えられます。これは公式スポンサーとの契約を優先したマーケティング主体の発想といえるのではないでしょうか。

デザイン開発の経験則として、「このような国際的な規模で展開するシンボルマーク開発の場合、制作期間が1ヶ月から2ヶ月は短すぎる、少なくとも半年から10ヶ月、最低でも3ヶ月の開発期間を設けるのが常識的だと考えます」とその場で担当者にアドバイスいたしましたが、今から決定事項の変更は難しいと聞き入れていただけませんでした。そもそも私への審査委員の依頼日が2014年9月3日、審査委員名や応募要項などの広報発表日が同年の9月12日、広報発表の9日前に審査委員を依頼されましたが、ここで辞退すると審査委員が7名になり、お困りになることは一目瞭然でしたので、断るという選択肢はないと判断し、当日に承諾したという経緯もあり、この背景をとってみても計画性の乏しさが伺い知れます。

再三にわたり、有識者の意見を聞きながら進めているとの説明を受けましたので、有識者なる方がデザインの専門家だったとすると、なぜ公募期間についての助言をしなかったのか疑問は残ります。もちろん組織委員会の公式会議で決定された公募期間が、権限のない私ごとき者の意見で変更になるとは思っておりませんが、コンペの成果をうむためには、公募期間を適正に設定すべきであるとの考えは今も変わりません。

次の公募に際し、10月6日の公式発表にて、締め切りが12月7日と発表され(応募要項は12日〜16日に公表予定)、応募期間も前回同様に2ヶ月を切り、新たな公募も前回とほぼ同じ期間で進行しています。前回の審査運用における課題や問題は、充分に検証されているのでしょうか。
 
平野敬子
 
平野敬子 デザイナー/ビジョナー コミュニケーションデザイン研究所 所長
白紙撤回となった2020東京五輪エンブレムの審査委員を務める
 

五輪エンブレム問題の
事実と考察
001 責任がとれる方法で 002 公募期間の短さ 003 『展開』『展開性』『展開力』 004 知らされなかった招待作家 005 ブログを読んで下さっているみなさまへ 006 利害優先の土壌 007 修正案承諾拒否の経緯と理由 - vol.1 008 修正案承諾拒否の経緯と理由 - vol.2 009 『公』の仕事 010 専門家の盾 011 秘密保持誓約書という密室 012 いまこそ、私心なき専門性を問う 013 判断の論拠 014 最終の審議 015 金銭感覚と敬意の相対性 016 表現におけるモラリティと表現者のモラル 017 言葉のちから 018 何のための調査なのか、調査の目的は何なのか - vol.1 019 何のための調査なのか、調査の目的は何なのか - vol.2 020 何のための調査なのか、調査の目的は何なのか - vol.3 021 何のための調査なのか、調査の目的は何なのか - vol.4 022 願い 023 摩訶不思議な調査報告書 024 負の遺産とならないように 025 出口なき迷路 026 届かぬ思い 027「社会に位置づくデザイン」という観点 028 無責任主義の村 029 審査委員として知り得た情報のすべて 030 新聞寄稿文への異論 - vol.1 031 新聞寄稿文への異論 - vol.2 032 1対3の構図 - 「A案」VS「BCD案」 033 今を生きる 034 負の連鎖……を断つために 035 欲望の公害 精神の断絶 036 イカサマ文書 by JAGDA - vol.1 037 イカサマ文書 by JAGDA - vol.2 038 イカサマ文書 by JAGDA - vol.3 039 事実はひとつ 040 新世界へ 041 JAGDA文書への意見と要望 ― 法律の専門家による分析 042 JAGDAの回答 JAGDAへの要望書 043 「要望書へのJAGDAの回答」に対する更なる質問 044 「意見書へのJAGDAの回答」に対する質問と提案 045 ブラック・デザイン 046 弁護士から届いた封書 047 おとぎの国の物語 048 退会届
Tokyo 2020 Olympics Logo Controversy--Facts and Observations 001 My way of taking responsibility 002 Duration of contest was way short 003 “Development” “Development Capabilities” “Development Power” 004 Guest artists I wasn’t told about 005 To My Readers 006 A culture where special interests take priority 007 How and why I refused to accept the modified design - vol.1 008 How and why I refused to accept the modified design - vol.2 009 Strictly “public” work 010 Specialists as shields 011 Behind closed doors-secrecy surrounding a non-disclosure agreement 012 Time to put selfless expertise to the test 013 Rationale behind my decision 014 The final review session 015 Is the money mindset relative to paying respect? 016 Morality of expression and the morals of its creator 017 The power of words 018 An investigation for what? What is the purpose of the investigation - vol.1 019 An investigation for what? What is the purpose of the investigation - vol.2 020 An investigation for what? What is the purpose of the investigation - vol.3 021 An investigation for what? What is the purpose of the investigation - vol.4 022 My wish 023 Mystifying investigation report is out 024 In order to prevent a negative legacy 025 Stuck in a maze with no exit 026 A voice unheard 027 A viewpoint that calls for “design with a place in society” 028 A village with a policy of irresponsibility 029 Every piece of information that I garnered as a judge on the selection committee 030 Objections to a newspaper contribution - vol.1 031 Objections to a newspaper contribution - vol.2 032 The underlying picture of one against three - “Plan A” versus “Plans BCD” 033 Living in the moment 034 Putting a stop……to a negative chain of events 035 Pollution by greed and discontinuity of the spirit 036 Bogus document by JAGDA - vol.1 037 Bogus document by JAGDA - vol.2 038 Bogus document by JAGDA - vol.3 039 Every fact has only one version 040 Toward a whole new world 041 Opinion and request regarding JAGDA document―An analysis by a legal specialist 042 Reply from JAGDA Request letter to JAGDA 043 More questions re: "Reply from JAGDA regarding Request Letter" 044 Questions and proposal re: "Reply from JAGDA regarding Request Letter" 045 Rogue design 046 Letter from the lawyers 047 Tales from Wonderland 048 Withdrawal Notice