2015.12.10 Thursday

020 何のための調査なのか、調査の目的は何なのか - vol.3

018章と019章にひき続き、時系列の記録に則り、調査について考察したいと思います。

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(Mail-09)
■ 10月30日8:00メール受信
組織委員会□□様→平野

メールには、調査を受諾したことへの謝辞と、有識者のスケジュールの候補日を調整し、連絡する旨が記されていました。
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調査依頼を受諾したあとに、インターネットのニュースで調査に関する記事を読みましたところ、組織委員会からの調査依頼のメールには記述されていなかった、いくつかの気になることが書いてありました。その記事には、「聞き取り調査を申し入れても断ることはでき、強制力はないため、どこまで真相に迫れるかどうかは定かではなく、不正な選考があった場合でも処分を科せるかどうかについても未定だという(日刊スポーツ電子版10月29日)」ことと、外部有識者として現エンブレム選考委員が入っていることが記されていました。

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(Mail-10)
■ 11月1日19:49メール送信
平野→組織委員会□□様  

□□様

本日は、たいせつな質問があり、連絡いたしました。

29日(木)に、□□さまから調査依頼をいただきまして、同日に「調査協力いたします」と回答しましたが、調査依頼の連絡が入りました同日に、インターネットのニュースで、調査に関する記事を読みましたところ、□□さまからお聞きしていない、気になる記述がいくつかありました。つきましては、以下に質問を列記いたしましたので、ご回答下さいますようお願いいたします。

(質問1)
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まず、マスコミに向けて記者発表を行われたのでしょうか。その際に記者に渡されたリリース(資料)はあるのでしょうか。リリースが存在するのであれば、お送りいただくことは可能でしょうか。
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(質問2)
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記事の中に、「聞き取り調査を申し入れても断ることができ、強制力はない」との記述がありました。調査は全員参加という前提ではないのでしょうか。それとも記事に書かれていることは事実でしょうか。本件について回答をお待ちしています。もし仮に、記事が事実であって、強制力はなく、全員参加しないという前提の調査であるならば、なぜそのような方法をお考えになったのか、理由をお聞かせ下さい。
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(質問3)
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いただきました文面では、有識者に関しての具体的な記述がありません。ですので、有識者のお名前やお立場等、詳細な情報をお教え下さい。

29日(木)に、「外部有識者による調査チームの第1回会合が行われた」との記事を読みました。また過去の記事でも「外部有識者による調査チーム」の情報は見ています。この「外部有識者による調査チーム」という情報と、今回の「現エンブレム委員も調査に参加する」という情報は、矛盾しているように思いますが、「外部有識者による調査チーム」には組織委員会関係者も含まれるということでしょうか。本件につきまして回答をお待ちしています。
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29日(木)にいただきました調査依頼メールでは、調査に関する具体的な情報をいただいておりませんでした。私への打診という意味で、詳細情報がないご依頼だったのかも知れませんが、記事を読み、調査に対して不安な気持ちになりました。ですので、協力すると回答しました旨を、一度白紙に戻します。

まずは、調査に関する詳細な情報をいただきたく、正式な書面にてお送り下さい。その書面の内容を拝見しましたのちに、調査の協力について改めて返事させていただきたいと考えます。

何とぞ、宜しくお願いします。

平野敬子
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(Mail-11)
■ 11月2日17:52メール受信
組織委員会□□様→平野

メールには、(Mail-10)の質問に対する回答が記載されていました。

(質問1)に対しては、先週木曜日の月例記者ブリーフィングの場で口頭によりプレスに説明し、資料は渡していないとのことと、外部有識者の氏名と職業名などの情報が記してありました。公募前に特定の人に参加要請文を送付していたことが明らかになり、この参加要請と審査との関連について、外部有識者によって調査を行うことが調査の目的であると記されていました。

(質問2)に対しては、協力の打診は10月28日からはじめているが、組織委員会には強制権限はなく、あくまでも任意の調査であるとの説明でした。

(質問3)に対しては、組織委員会が考える外部というのは、組織委員会の職員以外の方という意味で、エンブレム委員会の委員はこれに該当するものと考えているとの回答でした。
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「外部というのは、組織委員会の職員以外の方という意味であり、エンブレム委員会の委員はこれに該当するものと考えている」との説明を何度読み返してみても、私には、エンブレム委員会の委員が組織委員会の外部というふうに捉えることはできません。「有識者」と記されているならまだしも、わざわざ「外部有識者」と表記していることに違和感を感じますし、これに関する組織委員会の理屈や説明は詭弁のように聞こえます。

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(Mail-12)
■ 11月3日07:40メール送信
平野→組織委員会□□様

□□様

回答いただきました内容を拝読しました。調査に強制力がないということは残念に思います。現時点では、調査内容や方法についての情報があまりに少ないために、調査の協力に関して回答することができません。少しだけ考える時間をいただけますか。

(このメールでは、2位案作者の原研哉さんが、11月2日に自社のホームページ上に応募作品を公開したことに対して、調査直前のタイミングでの出品作品の情報公開は、調査に支障をきたさないのか、公開作品を出品しないとはいえ、次回コンペへの影響はないと考えるのかといった質問をしています。)

平野敬子
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エンブレムの審査は、机上に並べられた作品ボードを見るという方法で行われましたが、ウェッブ上に公開された作品は、閲覧環境がモニターのため、審査会場の環境で見ていた作品とは随分と印象が異なって見えました。作品画像が無断で流出し、週刊誌の誌面に劣化した情報として掲載されてしまったことの理不尽さを考えると、作品を公開したい気持ちは察するに余りありますが、次回コンペの決定後であれば、調査にも、次回コンペにも支障はないと思うものの、調査直前という緊迫したこのタイミングでの情報公開に対して、元審査委員の立場としては、本件について組織委員会の見解を聞きたいと考え、質問しました。

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(Mail-13)
■ 11月3日08:41メール送信
平野→組織委員会□□様

(Mail-12)の記述のなかに、私の誤認箇所がありましたため訂正し、再度、同じ質問をしました。
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(Mail-14)
■ 11月3日14:32メール受信
組織委員会□□様→平野

質問に対する組織委員会の回答はいただけませんでした。調査への協力要請について記されていました。
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(Mail-15)
■ 11月5日15:15メール送信
平野→組織委員会□□様

□□様

調査に協力するにあたり、出品作品をいまいちど確認させていただきたいと考えています。その理由は、調査に関して私ができることがあるとすれば、特定の作家の出品作品と一般の出品作品の間に、何か差異があったのか否かを専門家として確認し、見解を述べることではないかと考えるからです。つきましては、私のこの要請に対して、回答をお待ちしています。

また、調査協力に関する依頼書、調査の内容等を詳しく明記した正式な書類を作成し、メールにてお送りいただきたく、なにとぞお願いいたします。

平野敬子 
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(Mail-16)
■ 11月6日21:52メール受信
組織委員会□□様→平野

調査協力に関する依頼書と質問事項の書類が送られてきました。出品作品画像について確認したところ、応募作品の著作権はすでに応募者に戻されたとのことで、「画像情報提供は、慎重に対応することが望ましい」との見解が記されていました。調査の質問内容には、個々の画像を見ることが必須の事項は含まれていないとの説明もありました。調査日程の調整を進めたいとの組織委員会の希望が記されていました。
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作品を見せられない理由として、「画像情報提供は、慎重に対応することが望ましい」との見解が示されましたが、私はひと言も、「画像情報を提供して下さい」とは言っておりません。「組織委員会に見に伺います」とお願いしています。調査に関するメールのやり取りに関しては、直接の担当者の□□さま以外にも、組織委員会の職員4名にCCがついており、組織委員会側は5名が情報共有していますので、個人対個人のやりとりにはなっておらず、このことに気が付く方がいないことを不思議に思います。故意ではないと思いますが、私の要望した「作品を見に伺います」は、「画像情報を提供して下さい」へと、事実のすり替えが行われています。

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(Mail-17)
■ 11月7日18:04メール送信
平野→組織委員会□□様

□□様

調査協力に関する依頼書と質問事項の書類を拝受いたしました。
週末になりましたため、顧問弁護士の意見を伺えませんために、返信は週明けとさせていただきます。本日は、書類受信の報告にて失礼いたします。

平野敬子
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(Mail-18)
■ 11月13日20:22メール送信
平野→組織委員会□□様

□□様

先週の土曜日にお送りいただいたメールの内容を、弊社の顧問弁護士に法律家の観点から分析いただいたのちに、私が考察するために時間がかかりました。

改めまして、出品作品の再確認の要望に対し、ご回答いただきました組織委員会及び□□さまの見解について、顧問弁護士と確認した内容をもとに以下に返答いたします。

まずお願いしているのは画像情報の提供ではありません。私の申し出は、そちらに出向いて提出された作品現物を再度確認したいということです。その点を再確認させていただきます。そちらに出向き、提出された作品現物もしくは画像を見ることを前提とした場合、作者に著作権があることが見せられない理由にはなりません。

著作権者に無断で複製することはもちろんできません。しかし、当初からお伝えしておりますとうり、組織委員会に提出された現物を、すでに審査で見ている作品を、審査委員である私自身が出向いて見るのであれば、複製もしないわけですし、権利侵害する点はないと考えます。

また、作者に無断で一般に公表することはできません。しかし、すでに応募された作品ですから、組織委員会及び審査員には開示されることが前提で作者は応募しています。元の審査は終了していますが、その審査の問題点を検証するための調査に協力するために、当初の審査に付随するあるいは一体のものとしてもう一度見せたからといって、何ら権利の侵害にはあたりません。ですので、再確認が出来ない理由は見当たらないと考えます。

著作権のこと以外にも作品を見せられない理由はなにかあるのでしょうか。あるのでしたら具体的に教えてください。ご返答のほどよろしくお願いいたします。可能な限り早いタイミングで作品の再確認にうかがいたいと考えます。

平野敬子
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(Mail-19)
■ 11月16日11:57メール受信
組織委員会□□様→平野

調査協力に関する質問事項の書類が再度、送られてきました。
出品作品画像の確認について有識者と再度協議したが、応募作品の再確認の要望には応じかねるとの回答。理由は、新エンブレム公募が来週から始まり、前回作品を使う公募者もおり、作品をより慎重に扱う必要があるためとのこと。今回協力依頼している調査項目は、添付の項目であり、個々の作品を見なくても答えられる内容とのこと。聞き取り調査が難しい場合は、添付の調査項目にメールで返信いただく形でもよいとのことが記してありました。
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(Mail-20)
■ 11月17日17:31メール送信
平野→組織委員会□□様

□□様

ご多忙な中、私の質問についてご検討下さり、有り難く存じます。 
次回の応募のために取り扱いを慎重にとの事であれば、次回の応募閉め切り後であれば問題ないと思いますので、締切りが12月7日正午ですので、同日の午後に伺って確認させていただくという方法を、再度、検討いただけないでしょうか。

もしそれでも確認できないというのであれば「次回の応募のために見せられない」という理由は本当の理由ではないということになります。

調査は11月末までとのことですが、これも絶対的な必然のあるスケジュールでもないと考えますので、調査を重要視すれば1週間期日をのばせば良いことで、スケジュール優先でちゃんと調べずに11月末に終わらせることも出来ます。つまりは調べたいか調べたくないかなのだと思います。なぜならば、特定の作家に何か特別な優位性が与えられていたとすれば、作品に何らかの特徴が他の出品者との比較において現れている可能性があると考えるからです。そしてそれは専門的な見地で検証することで、確認が可能な内容だと考えます。

出品作品を検証しないということは、物的証拠に成りうるものがあるにも関わらず、それを全く無視して調査をすることであり、あえてそうするのであれば、そうした方が都合の良い理由があるのだと考えるのが自然です。

個々の作品を見なくても答えられる内容しか質問しないことが有識者の御見解だとすると、つまりこの調査では、特定の作家の作品が審査における公平性に対して影響を与えたか(例えば他の出品者とは違う特別な情報を受け渡されていたことで、それを作品に反映させていた可能性)を積極的には調べたくない、もしくは調べられると困るというスタンスであると解釈できます。今回の調査はそのような方針であると受け止めてよろしいでしょうか?

繰り返しますが、それを否定するのであれば、作品の再確認を拒否する理由を再度、ご提示、ご明示ください。

平野敬子
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平野敬子
 
平野敬子 デザイナー/ビジョナー コミュニケーションデザイン研究所 所長
白紙撤回となった2020東京五輪エンブレムの審査委員を務める

五輪エンブレム問題の
事実と考察
001 責任がとれる方法で 002 公募期間の短さ 003 『展開』『展開性』『展開力』 004 知らされなかった招待作家 005 ブログを読んで下さっているみなさまへ 006 利害優先の土壌 007 修正案承諾拒否の経緯と理由 - vol.1 008 修正案承諾拒否の経緯と理由 - vol.2 009 『公』の仕事 010 専門家の盾 011 秘密保持誓約書という密室 012 いまこそ、私心なき専門性を問う 013 判断の論拠 014 最終の審議 015 金銭感覚と敬意の相対性 016 表現におけるモラリティと表現者のモラル 017 言葉のちから 018 何のための調査なのか、調査の目的は何なのか - vol.1 019 何のための調査なのか、調査の目的は何なのか - vol.2 020 何のための調査なのか、調査の目的は何なのか - vol.3 021 何のための調査なのか、調査の目的は何なのか - vol.4 022 願い 023 摩訶不思議な調査報告書 024 負の遺産とならないように 025 出口なき迷路 026 届かぬ思い 027「社会に位置づくデザイン」という観点 028 無責任主義の村 029 審査委員として知り得た情報のすべて 030 新聞寄稿文への異論 - vol.1 031 新聞寄稿文への異論 - vol.2 032 1対3の構図 - 「A案」VS「BCD案」 033 今を生きる 034 負の連鎖……を断つために 035 欲望の公害 精神の断絶 036 イカサマ文書 by JAGDA - vol.1 037 イカサマ文書 by JAGDA - vol.2 038 イカサマ文書 by JAGDA - vol.3 039 事実はひとつ 040 新世界へ 041 JAGDA文書への意見と要望 ― 法律の専門家による分析 042 JAGDAの回答 JAGDAへの要望書 043 「要望書へのJAGDAの回答」に対する更なる質問 044 「意見書へのJAGDAの回答」に対する質問と提案 045 ブラック・デザイン
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